世界の街角から
(アメリカ編)

アメリカ旅行
prev

17

グランドキャニオン①

 2008年にモニュメントバレーで撮影した写真を2018年に見ながら2015年の夏井いつきの思い出を書いたが、さて、また2008年のアメリカに戻ろう。
 モニュメントバレーのジョン・フォードポイントからスリーシスターズという印象深いビュートを見たあと、太陽の目と壁画を見た。岩山の上部に空いている穴が太陽の目であった。その辺りはちょっとした洞窟のようになっていた。角の長い四本足の動物が壁に描かれていた。地面に水の湧き出したところがあり、何か小さなものが動いていた。砂漠とは不思議なものだ。生き物の気配がまったく感じられないと思っていると、こんな少しの水たまりに魚みたいなものが泳いでいる。思わず写真を撮ってしまった。
 モニュメントバレーはナバホ族の居留地にあり、ナバホ族の人々により管理・運営されている。我々をバンに乗せて運転するのもナバホ族の人である。この壁画の近くにツアー一行は集まって、彼らの話を聞いた。彼らは笛を吹き始めた。アルトリコーダーのような音が流れ、しばらくの間時が止まった。このときの曲を聞きたいと思うが、ネットなどで探してもどうしても手に入らないのである。バスの中でジョーイが掛けてくれたナバホ族の音楽も手に入らなかった。あとで手に入るだろうと思っているものがいつになっても見つけられないことが私には多すぎるのである。
 ビュートの下にある今にも崩れ落ちそうな斜面に立てられたレストランで昼食をとった。ナバホ族の祝いの席にあがる料理を食べた。ナバホ・タコスだ。円形の平たい揚げパンの上に野菜や煮豆が載っているのをソースを掛けて食べる。おいしかった。食後にデザートビューにあるウォッチングタワーに途中まで上った。薄茶色のレンガでできた灯台のような建物だった。中世ヨーロッパのお城のような雰囲気がある。
 バスに乗りグランドキャニオンに向かう。これが本ツアー最大の目玉である。しかし、バスは走り始めるとまもなく土産物屋に停まった。インディアン・グッズがたくさんあった。愛嬌のある女性スタッフがいろいろと薦めていた。
 グランドキャニオンに到着したのは日没の少し前であった。JTBの企画で夕日が沈むまでグランドキャニオンを見ようというのだ。そして明日になったら朝日の昇るグランドキャニオンも見るのだという。疲れ切った私にとって、この企画はあまりうれしいものに思えなかったが、2018年の私からすると、グランドキャニオンのサンセットとグランドキャニオンの日の出は、どちらか一方であっても、大変貴重で魅力的なものである。2008年の疲れた私が部屋で寝転がらずにたくさんの写真を残してくれたことを感謝したい。
next

【--- 作品情報 ---】
◆ 題名 世界の街角から(アメリカ編)
◆ 執筆年 2020年1月10日
◆ 群馬県立太田高等学校『図書館だより』の「閑話 世界の街角」に 2017年9月から2020年1月まで連載した紀行文である。
 ただし2019年10月から2020年1月までは諸事情により図書館のコーナー掲示となった。