世界の街角から
(アメリカ編)

アメリカ旅行
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ルート66②

 エルヴィス・プレスリーの頭の高さに「OPEN」「HISTORIC ROUTE66」のネオンランプが光っている。赤と青と黄色のネオンランプがいかにもアメリカ的だ。
 向かいの壁際にはベティちゃんが丈の短い赤いワンピースを着て立っている。右手は短いワンピースの裾を押さえ、左手は円形のトレイを口の位置で支えている。トレイには緑と黄色と青のマグカップが十五、六、ピラミッド型に積まれている。白い前掛けをしているから、客に飲み物を運ぶウェイトレスに見える。マグカップにはすべて「ROUTE66」の印がある。壁面や窓も「ROUTE66」の標識、ポスター、シールで埋め尽くされている。「COCA-COLA」も多い。この一画を見て、「アメリカだ」と思わない人は、まずおるまい。
 店外に出た。ニワトリが立っていた。もちろんこれも置物である。とさかの赤、くちばしと脚の黄色、首に巻いたスカーフの青が、くっきりと鮮やかである。星条旗が青い空を彩っていた。ハンバーガー屋、アメ車、アメリカンバイク、モーテル。目に映るのはそういったものばかりである。
 ソフトクリームを買う。店の主人がマスタードのチューブを押した。こちらにピュッと黄色い中身が飛び出た。よけきれずに頭から引っ掛けられたと思ったら、なんと、おもちゃであった。お茶目なマスターである。彼はサングラスを掛け、終始笑顔を見せている。アメ車を指さして、写真を撮っていけと言うので、ソフトクリームを持ったまま、なんだか間の抜けた写真を何枚か撮った。
 ルート66の自由散策時間が終わり、昼食会場に移動した。「golden corral」というハンバーガー屋である。大きな鉄板にハンバーグがずらりと並んでいた。とてもいい匂いである。ハンバーガーにかじりついた。さっぱりして癖がない。アメリカで思ったのは、ハンバーグがおいしいことだ。さっぱりとして、くさみがまったくない。アメリカは、ハンバーガーもステーキも野菜もソフトクリームもケーキもおいしかった。これまで訪れた国――インド、イギリス、フランス――よりも、アメリカの方が、食べ物がおいしかった。食事という要素だけで判断するなら、また行きたい外国は、断然アメリカだ。
 食事を終えると、また、バスに乗った。再びラスベガスに滞在する予定になっている。宿泊するのは、またモンテ・カルロである。ラスベガスのホテルは、それぞれ独自のテーマやアトラクションを有している。モンテ・カルロは、ランスバートンのマジックショーが売り物である。これは日本で既に予約してあった。それを見るのは明日の夜である。その前、――今日の夜と明日の日中は、トレジャー・アイランドの〈海賊船上における美女と海賊の乱闘ショー〉(もちろん正式名称ではない)、ベネチアンのゴンドラ、パリスのエッフェル塔、サーカスサーカスのサーカス、ベラッジオの噴水ショーなどで楽しもうと思っている。
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【--- 作品情報 ---】
◆ 題名 世界の街角から(アメリカ編)
◆ 執筆年 2020年1月10日
◆ 群馬県立太田高等学校『図書館だより』の「閑話 世界の街角」に 2017年9月から2020年1月まで連載した紀行文である。
 ただし2019年10月から2020年1月までは諸事情により図書館のコーナー掲示となった。