世界の街角から
(アメリカ編)

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再びラスベガス②
ホテル「ベネチアン」の運河は本当にベニスの運河のようである。ベニスにはまだ行ったことはないが、映画で観た運河そのままという気がした。あれは確かキャサリン・ヘプバーン主演の『旅情』だったと思う。キャサリン・ヘプバーンは、一人旅の女性を演じていた。ベニスの街を観光している途中、男性と知り合いになるのだ。夏のバカンスが終わると二人は別れる。昔、サーカスというグループの「ミスター・サマータイム」という曲が流行った。「ミスター・サマータイム さがさないで あの頃の私を」というふうに始まる。これが『旅情』の状況に似ていると思う。「しのびよる ささやきに ふりむいた あの日の ひとときのあやまち」とあるから、やはりこの映画と重なると思うが、いかがだろうか。キャサリン・ヘプバーン演じるアメリカ人女性にとって、あのベニスの男性は、まさに「ミスター・サマータイム」である。この二種の文化的現象に関連があるかどうかはともかく、私は、今でも、サーカスの「ミスター・サマータイム」が流れると、すぐに『旅情』を思い浮かべてしまうのである。ゴンドラに乗りたかったが、夜もだいぶ遅くなっていたので、ホテル「モンテカルロ」に戻って、寝ることにした。
第5日目 2008年8月14日(木)
今日はラスベガス一日自由行動の日である。朝起きて支度をするとデュースの一日乗車券を購入する。デュースとは二階建てバスの名称である。五ドルで二十四時間乗ることができる。デュースに乗り二階からストリップの眺めを楽しみ、「パリス」で降りた。目の前に凱旋門とエッフェル塔が立っていた。エッフェル塔は実物の二分の一の高さである。しかし、今はエッフェル塔に昇らない。「パリス」のバフェ「ル・ビレッジ」で朝食を食べるのだ。バフェとはビュッフェのことである。まあ、簡単に言えばレストランだ。しかし、ラスベガスではバフェというのをよく見かける。よくわからないがとにかくバフェなのだ。凱旋門で写真を撮り、「ル・ビレッジ」というバフェに入る。おいしくて人気がある店だそうである。席に着くと、ポットが置かれた。ふたをそっと開けてみるとコーヒーだった。このコーヒーを好きなだけ飲みながら、適当な料理を運んできて、食べた。たしかにおいしかった。朝食が終わったので、エッフェル塔まで行った。まだ時間が早いのでやってなかった。しばらく待ってやっと入場券を入手した。十ドルだった。「デイ・チケット」「午後七時十五分まで」と英語で書いてある。夜はいくらなのだろう。夜景をたくさん見に来るから、きっと高いだろう。エッフェル塔の途中にもレストランがあるので、そこで食事しながらベラッジオの噴水ショーを眺めるのもおつなのだそうだ。そんな話をしながらエレベーターで展望台まで昇る。