世界の街角から
(アメリカ編)
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再びラスベガス③
ラスベガスのエッフェル塔の展望台に到着した。眺めはよいが足はすくむ。こういう場面で私が必ず考えてしまうことがある。私はなぜすぐに高いところに昇りたがるのだろうか。ということだ。昇りたがるのに昇ると必ず怖くなるのである。怖いのに遊園地などに行くと必ずジェットコースターとかブルーフォールとか年甲斐もなく乗ってしまうのである。ところでブルーフォールというのをご存知だろうか。ブルーフォールとは横浜・八景島シーパラダイスにあるのだが、これはすごかった。垂直に百メートル昇って、そこからただ落下するだけなのだが、そのただ落下するだけということ自体が究極の恐怖である。ところが、ところがである。意外なことに、実を言うと、これはやってみるとなんともあっけないのである。人がやっているのを見ているときの方が何倍も怖い。同じ乗り物でもジェットコースターの方が時間が長いだけずっと怖いと思う。面白いもので、怖そうに見える方が怖くない。そういう理屈では、ジェットコースターよりバイキングの方が実は怖いと思うのだが、いかがだろうか。いや、そういう論法でいくと、本当は、遊園地で一番怖いのは、一番ファミリーっぽい顔をしているあの観覧車ではないだろうか。あんな華奢そうなゴンドラに閉じ込められた状態で、あれだけの高所にあれだけの時間引き上げられているのである。風が吹けば揺れるし、何て言ったってブルーフォールより高いものまであるのだ。いや、伊勢崎名物華蔵寺公園の観覧車だって、北関東一、高さ七十メートル、ブルーフォールとたった三十メートルしか違わないのである。毎年華蔵寺に花見に行くと必ずあの観覧車に乗って、そしていつも後悔するのだが、絶対に観覧車はこの世で一番怖い乗り物だと思う。華蔵寺公園の観覧車は北関東一怖い乗り物だ。ラスベガスのエッフェル塔に話を戻す。まずこのホテル「パリス」のシンボルである青い気球が見える。ストリップを挟んで向こう側にホテル「ベラッジオ」の入口の広告塔が立っている。巨大な黄色の「O」の字は、アトラクションの宣伝であろう。そして、広大な青い池。水の中にジェットコースターのレールのようなものが見える。このレールみたいなところから芸術的な噴水が噴き出すのであろう。残念ながら今は噴き出していない。モーターボートが一艘水面を走っているだけだ。噴水の点検をしているのだろう。池に面して南欧風の瀟洒な建物が取り巻いて、実に優美である。「ベラッジオ」の南側に建築中の建物が見える。さらにその南側に我々の宿舎である「モンテカルロ」が見える。その南に「ニューヨークニューヨーク」のジェットコースターと自由の女神が見える。その南に中世のお城の外観の「エクスカリバー」、その南に「ルクソール」のスフィンクス、その南に黄金に輝く「マンダレイベイ」が見える。