すいす物語

すいす物語
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  二〇二二年二月

 二月にとうとう雪が降った。
 朝、家を出るときぐらいに降りはじめた。かなり強い降り方だったが、気温が高めで、水分が多いので、アスファルトには積もらなかった。田畑は白くなった。家や車の屋根も白くなった。仕事場に着き、駐車場に停めた。夕方には、雪はほとんど降っていなかった。駐車場に来ると、ミライの周りは、溶けたシャーベットのようになっていた。慎重にドアを開け、乗り込んだ。まだ新しいマットに雪の張りついた靴を乗せるのは、惜しい気がした。
 ワイパーのオート機能は便利だった。フロントガラスに付着した水分の量に応じて、自動的に動作間隔が変化した。どういう原理でそのように動くことができるのか考えたが、まったく想像できなかった。
 ミライには、ワイパー以外にも、オート機能がいろいろ付いている。レーダークルーズもその一つだ。ミライにもグレードがあり、これよりもグレードが高いと、前の車と同じように走ることができるようだ。このミライは一番低いグレードなので、そこまでの機能は付いていない。しかし、使い方によっては、それに近いことはできる。
 まず、レーダークルーズのボタンを押す。そうしたら、三十キロ以上になるまでスピードを上げる。たとえば六十キロにしたとする。そこで、セットするためのボタンを押す。もしも、前方に車がなければ、ミライはずっと六十キロで走る。そこへ、五十キロで走っている車に追い付いた場合、ミライは五十キロまで自動的に減速する。前の車が四十キロまで速度を落とすと、ミライも四十キロまで落とす。前の車が停車すると、ミライも停車する。前の車が再び動きだしたら、もう一つのボタンを押すと、ミライは動き出す。前の車が五十キロまで速度を上げると、ミライも五十キロになる。だいたい、こんな具合に使う機能だ。条件がいいと、ほとんどブレーキとアクセルを使わずに、目的地に行くことができる。レーダークルーズのアクセルワークとブレーキ操作は、かなり効率的なので、自分がやるよりも燃費がいいような気がする。
 レーダークルーズのいいところは、諦めの付くところだ。早く目的地に着きたくて、スピードを出しすぎたり、追い越して行った車と張り合いたくなったり、割り込まれないように車間を詰めたりということが、ドライバーの一時の感情として、生じがちであるが、レーダークルーズで速度を設定すると、それに従えばいいやという気になる。前車との車間も一定に保たれるので、割り込みそうな車があるときに、アクセルをふかす気にもならない。割り込まれたら割り込まれたで、また、自動的に車間が調整されるので、なんの問題もない。
 しかし、レーダークルーズも完璧ではない。雪が強く降ると、レーダークルーズは作動不可能になる。それに、いつでも自分で操作できるように注意を集中しておかなければならないから、結構つねに緊張する。(2022/02/11)
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【--- 作品情報 ---】
◆ 題名 すいす物語
◆ 執筆年 2022年2月5日~