すいす物語

3
二〇二二年三月
すいすに到着すると、青いミライが先に来ていた。カタログの表紙にあったので、最初は青いミライがいいと思った。しかし、カタログの中をだんだん見て行くと、グレーの方を買いたくなった。結局グレーのミライに乗っている。
青いミライは水素を入れているところだった。ガソリンと違い、水素は、入れおわってから、次の車に入れるまでに、少し時間を置かなければならない。圧力の調整が必要だとかなんとか店員が言っていたが、理由ははっきり覚えていない。ただ水素を車に入れると、次の車に入れるまで、十分ぐらい待たなければならないことだけは覚えている。
青いミライは、水素を入れおわり、去っていった。私はミライを前に進めた。店員が近寄ってきた。窓を開けた。十分ほどお待ちくださいと言われるのだろう。
「今入れおわったら、機械の調子が悪くなってしまいましたので、しばらくお待ちください」
予想外の展開だった。十分後、店員が再び近寄った。
「機械の調子が戻らないので、また後ほどお越しください」
修理が必要なのだと言う。メーカーに問い合わせてみなければ、いつ直るかわからない。そう言われたのだが、さて、困ってしまった。ガソリンスタンドのようには、水素ステーションはありふれた存在ではない。というより、この水素ステーションで入れられなければ、県内に入れる場所は、ほかにないのである。手近な水素ステーションは、高速道路で一時間という遠いところにある。あまり手近という言葉にはふさわしくない距離である。
私は、この水素ステーションが復旧するまで待つか、高速道路を一時間かけて、「手近」な水素ステーションに行くかを検討した。
私のミライにはまだ水素が半分残っている。だから、それほど慌てて水素を補給しなくても問題はなさそうである。問題は水素ステーションの営業時間と私の勤務時間である。
水素ステーションは、木曜日が定休日である。それ以外は、毎日朝の九時に開店し、夕方の五時に閉店する。私は勤務日に、朝八時半までに出勤しなければならない。そして、夕方の五時にならないと勤務を終了できない。つまり、勤務日にすいすに寄って、水素を補給することは不可能である。したがって、休日に入れるしかない。休日は、基本的には土日だ。実は今日は土曜日で、それで、水素を入れに来たわけである。店員は明日の日曜にも復旧はできないと言っていた。ということは、少なくとも来週の土曜日までは水素を入れることはできないのである。タンクに半分の水素だと、今までの経験上、五日間の通勤がぎりぎりできるかどうかというところである。来週復旧すればいいが、しなければ、残っていたとしてもなけなしの水素で、一時間高速道路を走らなければならない。それはたぶん無理だろう。
計算を終えた私は、高速道路に乗った。県外の「手近」なすいすに行くのも、たまには気晴らしによいかもしれないと思うことにした。(2022/03/20)
すいすに到着すると、青いミライが先に来ていた。カタログの表紙にあったので、最初は青いミライがいいと思った。しかし、カタログの中をだんだん見て行くと、グレーの方を買いたくなった。結局グレーのミライに乗っている。
青いミライは水素を入れているところだった。ガソリンと違い、水素は、入れおわってから、次の車に入れるまでに、少し時間を置かなければならない。圧力の調整が必要だとかなんとか店員が言っていたが、理由ははっきり覚えていない。ただ水素を車に入れると、次の車に入れるまで、十分ぐらい待たなければならないことだけは覚えている。
青いミライは、水素を入れおわり、去っていった。私はミライを前に進めた。店員が近寄ってきた。窓を開けた。十分ほどお待ちくださいと言われるのだろう。
「今入れおわったら、機械の調子が悪くなってしまいましたので、しばらくお待ちください」
予想外の展開だった。十分後、店員が再び近寄った。
「機械の調子が戻らないので、また後ほどお越しください」
修理が必要なのだと言う。メーカーに問い合わせてみなければ、いつ直るかわからない。そう言われたのだが、さて、困ってしまった。ガソリンスタンドのようには、水素ステーションはありふれた存在ではない。というより、この水素ステーションで入れられなければ、県内に入れる場所は、ほかにないのである。手近な水素ステーションは、高速道路で一時間という遠いところにある。あまり手近という言葉にはふさわしくない距離である。
私は、この水素ステーションが復旧するまで待つか、高速道路を一時間かけて、「手近」な水素ステーションに行くかを検討した。
私のミライにはまだ水素が半分残っている。だから、それほど慌てて水素を補給しなくても問題はなさそうである。問題は水素ステーションの営業時間と私の勤務時間である。
水素ステーションは、木曜日が定休日である。それ以外は、毎日朝の九時に開店し、夕方の五時に閉店する。私は勤務日に、朝八時半までに出勤しなければならない。そして、夕方の五時にならないと勤務を終了できない。つまり、勤務日にすいすに寄って、水素を補給することは不可能である。したがって、休日に入れるしかない。休日は、基本的には土日だ。実は今日は土曜日で、それで、水素を入れに来たわけである。店員は明日の日曜にも復旧はできないと言っていた。ということは、少なくとも来週の土曜日までは水素を入れることはできないのである。タンクに半分の水素だと、今までの経験上、五日間の通勤がぎりぎりできるかどうかというところである。来週復旧すればいいが、しなければ、残っていたとしてもなけなしの水素で、一時間高速道路を走らなければならない。それはたぶん無理だろう。
計算を終えた私は、高速道路に乗った。県外の「手近」なすいすに行くのも、たまには気晴らしによいかもしれないと思うことにした。(2022/03/20)