すいす物語

すいす物語
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  二〇二三年十月

 ミライは家にあるので、二日間見ていない。
 今回は、前回の病院生活の続きである。
 手術室には、医師や看護師がたくさん集まっていて、優しく迎えてくれた。
 手術台に横たわると、とても暖かい。
 スタッフが忙しく準備を始める。
 心電図と血圧の測定が始まった。
 スタッフが声をかける。
 「これから点滴の管から麻酔を流していきますよ。そのあと人工呼吸するために、気管に管を入れます。鼻に酸素マスクをつけます。尿道に管を入れます。麻酔が入っていますよ。少しぼうっとしてきますよ」
 たしかに、室内の風景や医師たちの顔がぼやけて見えるなと思った。
 なにか気持ちのよい夢を見ていたような気がするが、なにも覚えていない。とにかく非常に短い時間であった。
 だれかに起こされたような気がする。目が覚めてみると、体がなんだかわずらわしい。いろいろな管が邪魔に感じる。姿勢が苦しいので、横を向きたいが、それもできないなと思う。
 「体を横に向けてもいいですよ」
 そう言われ、足を少し曲げた。しかし、体を横に向けるのは無理そうだった。尿道の管が手に余った。動くと、響くのだ。
 「口に入れた管をはずしますよ」
 口から管が出ていく感じがあったが、痛くはない。
 「酸素マスクもはずしますね」
 口の管と鼻の酸素マスクが取れたので、かなり気分がよくなった。
 「しばらく休んでいてくださいね」
 姿勢を自由に変えられないので、やはり寝ているのが苦しかった。このまま明日の朝までこういうふうに寝ているのかと思うと、先が長い気がした。
 そのうちに病室のベッドが運ばれてきて、手術台から移してもらった。
 病室に戻った。
 右手に点滴、左手に心電図のクリップ、尿道にカテーテル。そういう状態なので、とても寝苦しい。
 しかし、ここまで手術のときにあけた四つの穴は、ほとんど痛まなかった。麻酔とか痛み止めの薬が効いているのだ。
 手術室に入ったのが、九時近く、部屋に戻ったのは、よくわからないが、十一時過ぎではないだろうか。
 この寝苦しさがずっと続くといやだなあと思っていたら、いつの間にか妻が帰ったあとに、眠りについてしまった。寝たり起きたりしているうちに、夜の七時ぐらいになった。その間に、水も飲んだ。手術から戻って、やたらと喉が渇くので、水がうれしかった。(2023/8/8)
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【--- 作品情報 ---】
◆ 題名 すいす物語
◆ 執筆年 2022年2月5日~