すいす物語

すいす物語
prev

41

  二〇二五年五月

 韓国では燃料電池車の大衆化を進めているようだ。水素ステーションも二百カ所近くあり、日本より多い。値段も安いようだ。現代自動車の張社長が燃料電池車を普及していくといっていて、韓国政府がそれを後押しする政策を打ち出しているので、この方向はほぼ間違いないのではないか。
 今回の関係ある歌は、渡辺はま子とミス・コロンビアと美ち奴である。
 渡辺はま子の『忘れちゃいやョ』。一九三六年、最上洋作詞、細田義勝作曲。ミス・コロンビアの『ふんなのないわ』。一九三七年、江口夜詩作詞、作曲。美ち奴の『あゝそれなのに』。一九三七年、星野貞志作詞、古賀政男作曲。
 戦時中は、歌謡曲も検閲された。渡辺はま子の『忘れちゃいやョ』は発禁となった。発禁第一号である。内容がよろしくないということなのだが、いったいどこがよくないのだろう。

 ねえ 忘れちゃいやヨ 忘れないでネ

 こういう箇所が繰り返されるのが特徴なのだが、たしかに、この箇所の歌い方は、ちょっと男心をそそるような感じである。しかし、これを発禁にしていたら、戦後の流行歌は、発禁だらけになってしまうだろう。
 しかし、この歌は、発売されたとたんに大ヒットし、これをまねた歌が続々とでる。その例が、ミス・コロンビアの『ふんなのないわ』や美ち奴の『あゝそれなのに』である。
 ただ、渡辺はま子本人は、この歌を歌わされることはいやだったようである。それから、ミス・コロンビアも、『ふんなのないわ』を歌うようにいわれたとき、涙を流したそうである。どういう歌なのであろうか。

 泣くんじゃないと 慰められた
 うれしい昔も あつたのに
 あなた此の頃 変なのね
 ふんなのないわ

 「変なのね」の「ね」を「ねえ」というふうに伸ばし、そのあと、ふにゃふにゃっとした感じで、「ふんなのないわ」と続く。このあたりが、男心にある種の作用を及ぼしそうな感じである。
 美ち奴の『あゝそれなのに』は、こんな歌である。

 夜更けに聞こえる 足の音
 耳をすませば 胸が鳴る
 帰って来たかと 立ち上る
 ああ それなのに それなのに
 ねえ おこるのは おこるのは
 あたりまえでしょう

 この歌にも「ねえ」がでてくる。この「ねえ」のところが、やはり、非常に甘ったるい感じである。
 このように「ねえ」「ねえ」と甘えたような歌が続けざまにでて、「ねえ小唄」と呼ばれ、ブームになったそうである。小唄勝太郎は、『ねエ小唄』という歌をだしている。
 当局はこの現象を非常に問題視し、流行歌に対する規制を強めていく。そして、愛国的な歌が全面的に放送されるようになり、彼女たちもその歌い手になるのである。(2025/3/15)
next

【--- 作品情報 ---】
◆ 題名 すいす物語
◆ 執筆年 2022年2月5日~